高い耐震性能・優れた排水性能を共に備えた箱型擁壁工法は全国各地で採用されています。

岩手・宮城内陸地震調査報告書

地震発生

2008 年(平成 20 年) 6月 14日午前 8時 43分 45秒岩手県南部から宮城県北部にまたがる活断層で直下型地震が発生しました。長さ 20km・幅 12km の逆断層で、断層面は西に行くほど深くなり西側の地盤が東側の地盤に乗り上げる構造です。


地震の詳細

震 央: 北緯 39 度 01.7 分 東経 140 度 52.8 分
震源の深さ: 約 8km
規 模: マグニチュード 7.2
最大震度: 石淵ダム(今回調査対象になった箱型擁壁 19 段設置現場より 2km 上流)に設置された地震計は震度 7 相当の揺れを記録。震度 6 強奥州市、宮城県栗原市
最大加速度: 1岩手県奥州市衣川区 1.816.5 ガル(気象庁)
2岩手県奥州市胆沢区石淵ダム 2.097 ガル ( 国土交通省 )
今回箱型擁壁調査地点に最も近い場所
※地震計が設置されていた石淵ダムは、建設中の胆沢ダムの完成時(2013 年)にはダム湖に水没します。 
3岩手県一関市厳美町祭畤 4.022 ガル(防災科学技術研究所)

箱型擁壁の被災確認

今回被災した箱型擁壁設置個所は、岩手県奥州市胆沢区若柳地区内にあり、現在この地域は国土交通省により洪水調整・かんがい・上水道・発電を目的とした多目的ダムを建設中で、現地に入山する許可を得るのに時間がかかりましたが、7 月 25 日入山許可を得て現地調査を実施いたしました。調査した箇所以外に岩手・宮城両県では箱型擁壁の被災はありません。(岩手県 19 件、宮城県 30 件施工済み)


調査準備

今回の調査は、主体を箱型擁壁協会広報部会(部会長 児玉 弘)北海道・東北支部の活動として調査の準備を行い、また設計技術部会(部会長麻生博幸)より応援をお願いしました。体制を整え、調査許可が関係官庁から下りるのを待ちました。
調査対象現場は、ダム完成後には本体内側のダム湖側になります。現場はダム関連工事で作業中に被災した作業員の捜索で、関係者以外の立ち入りが禁止されていたため 1 か月ほど許可されませんでしたが、7 月 22 日に関係官庁より許可が下りましたので、早速に田中会長より會澤副会長に調査責任者として現地調査の依頼をいたしました。會澤副会長、玉田文吾先生、広報部会北海道・東北支部幹事は、7 月 25 日現地に集合しました。今回、許可を頂くために各役所に奔走していただいた昭和コンクリート工業株式会社にはお忙しい最中、また被災を受けた中で努力をしていただいたこと心より感謝申し上げます。
現地役所には全員で挨拶に赴き、調査の目的を伝え了解を得ました。調査車両がダム工事現場を横切るため、規定の装備をお借りして現地調査に入りました。


震央から箱型擁壁施工現場までの距離


▲ページのトップへ戻る

現場平面図と現場断面図で見る被災状況

現場断面図

7月25日調査開始

高さ19段×延長34m8分の一定勾配(元設計)、擁壁上部は3mほどの盛土で上は道路になっています。擁壁の上も下も道路があり、それぞれ道路の勾配は5% 以上あり、擁壁全体を含む周囲地形が地すべりを起こし、擁壁上部道路は大きく地割れし、2 mほど陥没している状況です。
箱型擁壁の下段部に一部破損が見られるが、致命的な破損はありません。特に下段部分の小段幅に変位があり、一部では元設計の半分ほどの数値になっているが、擁壁全体は擁壁としての機能を維持しており、前面道路や其の他の道路の使用に支障はありません。

▲ページのトップへ戻る


現場平面図


目視による調査

箱体間目地も開いておらず、中詰め材の流出もありません。擁壁の構築形状は凹型になっており、背面側から2000gal(玉田先生)を超えたと思われる大きな加速度を受け、さらに擁壁背面側道路(切土で一部盛土)に地割れがあり地滑りの跡が確認できます。
調査した数値や専門家の見解書作成は後日になりますが、全体の印象は、擁壁を含む周辺地形全部が地すべりを起こし、その荷重が箱型擁壁の下部付近に集中している印象を受けました。その現象は、下段付近の小段幅に縮小がみられ、中段から上段には小段幅減少が少ないことが示しています。 擁壁上部にある道路部が大きく地割れして、更に上部の道路よりの水が地割れ部分に侵入し、今後地すべりを起こした部分(箱型擁壁も含む)の摩擦を著しく減少させる要因となる可能性があります。
下段部の箱体の一部に激しい衝突により割れが確認できますが、機能に支障はありません。また端部の一部(道路下方)に目地間に開口が見られます。端部箱体の施工不備と、地滑りによる結果と考えられます。


箱型擁壁の施工平面図(施工完成後)


箱型擁壁の震災直後の展開図(震災後の小段幅の変位量図)

左端の箱体は地山に入っていないため、目地が開いて、左側(道路下側)に離間している。4段~5段目の10番付近は250mmほど下側の箱体との段差がついている。箱体ごと前の素堀似溝へもぐり込んでいる。

▲ページのトップへ戻る


箱型擁壁災害調査概要

▲ページのトップへ戻る