直下型大規模地震が新潟県中越地方に発生、その後数時間に亘り本震に匹敵する強い余震が断続的に発生しました。マグニチュード6.8、川口町で震度7を観測しました。破壊力を示す加速度は午後6時34分の余震で震度6強を観測した際に、兵庫県南部地震の3倍を越える観測史上最大の2515galを示していました。今回の地震は内陸の交通の要衝が大きな被害を被りました。
第一次現地調査(平成16年11月9日~12日) |
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震央を中心にして、20k m圏内に設置されている箱型擁壁を、目視により隈なく確認することから始めました。その結果、多少の変状が見られるが、修復や、積み直しをしなくても擁壁として機能を失っていない箱型擁壁は今後の調査対象としない判断をしました。
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擁壁前の歩道が盛り上り溜枡の |
擁壁前面道路は中央線付近に南北方向と横断方向 |
第二次現地調査(平成16年11月21日~24日) |
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一次調査の結果、震央より450m程の位置(川口町大字木沢地区)において、高さ11m×延長 58mの箱型擁壁の変状を確認しました。擁壁はほぼ南北方向を軸に設置され、擁壁前面は軸方向(南 8°W)に約 8%の下り勾配の道路になっています。 |
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擁壁背面陥没(深さ約1.2m程) |
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また擁壁背面土が巾1m長さ15 ~20m、深さ1m~1.2m程陥没、そのため上段にある箱体が壁体材と共に、陥没した 背面側に大きく傾斜しており、その部分は擁壁としての機能を失いつつありました。しかし擁壁全体としての機能は喪失しておらず、生活道路として震災直後から今日まで障害なく保持していました。 |
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被災位置の確認 |
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対策案 |
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擁壁の機能復元対策案として提案しました |
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箱型擁壁工法は、箱型形状をした鉄筋コンクリート製のプレキャスト枠材(以下、箱体という)に、壁体材(中詰め・裏込め部)の単粒度砕石を密実に充填し、それらを階段状に積み上げて構築する擁壁です。 |
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監視と測量第二次調査において擁壁機能復元対策案として提案した一部積み直し案に基づき、工事着手まで変状の進行について記録と監視を第五次まで続けました。 |
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第三次現地調査 |
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本震発生13ヶ月後の平成17年11月28日より30日まで第三次調査を 行ないました。調査の目的は、震災直後の大きな余震、長雨、積雪、春の融雪等の自然の営みが箱型擁壁や周囲の地形に変化を及ぼしていないか、 また特に変状している箇所がどのように進行しているのか、また変化が ないかなどを確認することです。 |
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監視と計測 |
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第四次現地調査 |
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平成18年5月8日~10日に雪融けを待って第四次調査を行ないました。箱型擁壁協会では工事に着手するにあたり測量が実施されたので復元案(現況復旧)の詳細な断面図を作成し、設計・計算等の再確認作業を行いました。 |
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第五次現地調査 |
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平成18年5月23日~24日現地において安定計算等の設計確認作業が終了しました。 |
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工事着工 |
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「背面土等の修復及び箱型擁壁の 一部積み直し工事」として平成18年9 月に着工しました |
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測量終了後、測量データーを基に、箱型擁壁協会・設計技術部会による設計確認作業を行いました。その結果現在の状況(形態)のままで安定している事を確認、直ちに県の担当者に報告が行なわれ、発注者側、施工業者、箱型擁壁協会会員が現地で立会い設計の確認、施工の手順など打ち合わせ、工事を進める事になりました。まず箱体を取り外す作業からスタートしました。 |
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箱体の取り外し作業はクレーンと重機を使用し慎重に行なわれました。壁体材(中詰め単粒度砕石)の再利用率は背面 土の陥没による土砂混入もあり50%~55%程に留まりました。箱体はほとんど再使用しました。
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箱体の取り外し後、積み直し作業に入りました |
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積み直し工事は背面陥没の修復も含め 15 日ほどで完了しました。 |
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平成18年10月工事完了 |
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地震発生前 |
地震発生 18 日後 地震の影響で、 |
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工事完了 |
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新潟県中越地震は、新幹線の脱線、トンネル内の壁の崩壊や地盤の隆起など、様々な技術の基準を超える被害のあった地震でもありました。日本列島で現在判明している活断層は約2000を超えています。未知の活断層が今も古墳の発掘の際に発見されています。海溝型地震の予知はかなり進んでいますが、直下型の地震予知は非常に難しいと言われています。耐震性能に優れている箱型擁壁を今後さらに安全性を高めた工法に進化させ、国のライフラインを維持、国民の財産を守るために貢献することを誓い、震災から修復までの報告を終わります。 |